2010年度上半期の企業倒産件数が前年同期に比べて15.2%減少しました。
その背景には、「中小企業金融円滑法」があります。
これは亀井静香前金融担当大臣が肝いりで作ったもので、「企業が借りているお金の期限が来て返済猶予を求めた場合、銀行はそれに応じる努力をせよ」とういうものです。
昨年12月の施工から今年6月末までに同法に基づく猶予は累計で39万件を超え、総額13兆4000億円程度になっています。
私はこれを読んだ時、「大変なことだ!」と思いました。
企業が生き延びたのですからいいように見えますが、本当によかったのでしょうか。
一時的に資金が足りない程度ならいいのですが、今後猶予を受けた会社のどのくらいが再生出来るでしょうか。
単なる倒産の先延ばしなら、ただ負債が膨らむだけです。
2回3回と返済猶予を繰り返しても、事業計画の練り直しがうまく出来ていない企業があると書かれています。
本来は、先行きの見込みがなければ、その時点で倒産させた方が、その会社の損害が少なくて済むかもしれません。
ある時耐え切れず、返済猶予の会社が一気に莫大な借金を抱えて倒産することになれば、事業主の再生不可能になるばかりか、日本中にパニックが起きるかもしれません。
弱者に優しく思えた法律が、当人ばかりでなく他も引き込んで禍を広げることになりかねません。
昔、私が銀行員だった時、当時支店長に言われたことがあります。
「人にお金を貸すということは、貸すことで良くなることもあるが、貸した為によりダメになることもある。
貸さないのもその人の為ということもある」言っていたのを思い出します。
銀行は「傘が必要な時に傘を貸さず、必要ない時に貸そうとする」と言われます。
確かにそんな一面もあります。
しかし、銀行がこれ以上貸してはいけないと思っても、法律で貸し続けろと言われれば貸さざるを得ません。
それが企業の傷口を広げるとわかっていてもです。
今、改めて思います。
「小善は大悪に似たり」です。
優しいことが良いことばかりではないのです。