稲盛さんはこのことについて次のように書いています。
「仕事をする上で、部下や周りの人々の協力を得る為には、率先垂範でなければなりません。人の嫌がるような仕事も真っ先に取り組んでいく姿勢が必要です。
どんなに多くの、どんなに美しい言葉を並べたてても、行動が伴わなければ人の心をとらえることはできません。自分が他の人にしてほしいと思うことを、自ら真っ先に行動で示すことによって、周りの人々も付いてくるのです。
率先垂範するには勇気と信念がいります。これを常に心がけ実行することによって、自らを高めていくことも出来るのです。上に立つ人は勿論のこと、全ての人が率先垂範する職場風土を作り上げなければなりません。」
稲盛さんは経営者に対しては「リーダーたるもの、自ら最前線で仕事をしなければなりません。その後ろ姿で部下を教育するのがリーダーというものだ」と言います。
そして、会社のトップたる経営者は最前線に立って指揮を執るのがいいのか、後方に居て大局を見て指揮するのがいいのかについても言っています。
後方にいる経営者は「私は楽をしているのでない。全体を見る為に後ろにいるのだ」と主張しますが、それは自分が苦労をしたくない、楽をしたいからそう言うのです。
また一方、前線に居てばかりでは全体の動きを見切れないこともあります。
ですから、最前線で社員と一緒に苦労しては、後方に取って返して全体を見るようにするという具合に、臨機応変に行ったり来たりすることが必要です。
最後に稲盛さんは「社員の先頭を切って自分も仕事をし、苦労するという勇気が大切」と言っています。
よくあるのですが、経営者は会社が大きくなり、社会的地位も高くなると動かなくなる傾向にあります。
極端な時は社長室から一歩も出ず、全て報告させそこで方針を出すこともあります。
稲盛さんが言うように率先垂範をするという信念を持ち、現場に出ていく勇気が社長たる経営者には必要なのですね。