今回は「京セラフィロシフィ」勉強会最後の項目「経験則を重視する」です。
これについて稲盛さんは次のように書いています。
「企業での技術開発やものづくりには経験則が不可欠です。理論だけではものはできません。
たとえばセラミックスの場合、原料である粉体を混ぜて成型し、高温で焼けば出来あがるということは、勉強さえすれば誰でも理解できます。
ところが、粉体を混ぜるということがどういうことなのかは、実際に自分で手を染めて苦労してやってみないと決して分かりません。
液体や気体なら完全な混合が出来ますが、粉体はどこまで混ぜたら混ざったと言えるのか、それは経験則でしか分からない世界です。
この経験則と理論がかみ合って初めて、すばらしい技術開発やものづくりが出来るのです。」
この「経験則を重視する」は前項の「現場主義に徹する」とつながっています。
私は「経験」というと職人の世界を思い浮かべます。
学校も満足に出なかった人が、職人の世界に入り、下働きから始まり、叱られ、怒鳴られ、時には叩かれながら身体で基礎を覚え、仕事の技を盗むよう習得していきました。
それは理屈なしで会得していく姿です。
身体に染み付いた経験を通して、その世界の本質を知っていくのです。
一方、今は情報や知識を得ようとすればインターネットで簡単に手に入ります。
何かをするにしても、その作り方、使う道具も図解で紹介され、簡単なことは出来てしまいます。
この簡単に出来てしまうところが、落とし穴で、それで全てを知った気になってしまうことです。
また、自分は頭がいいと思ってる人は、動く前にどうしても物事を頭で考えます。
そしてそれを基準にして判断しようとしがちになります。
そこに経験で生きてきた人との対立が生まれます。
起業して会社運営をする時、往々にしてこのようなことにぶつかるケースがあります。
起業する人は得てして自分に自信があります。
自分の考えることだけが正しいと思いがちです
そのような経営者に必要なのは、「謙虚さ」です。
自分より経験のある人を素直に認める「素直さ」なのかもしれません。
稲盛さんが言うように「経験則と理論がかみ合った」状態にすることは、起業した会社が発展する大事な基本ポイントの1つです。