経理の仕事をしている彼女は、その仕事に関した出来事の紹介や考え方を書いてくれます。
今回で73号となっていますので6年以上続いています。
私は毎月この「さんかく通信」を楽しみにしています。
今回の通信の最初に「銀行取引停止猶予処分」のことが紹介されていました。
手形などが資金不足で期日に引き落としされない時は不渡りとされ、それが半年に2回あると「銀行取引停止処分」になります。
今回は東日本大震災で被害を受けた会社の救済目的で、従来の様な不渡手形としてでなく、「東日本大震災の災害による資金不足」として手形取立者に返却されるそうです。
対象は岩手・宮城・福島の3県の被害を受けた会社です。
普通は1度不渡りになった手形は再度銀行に取立依頼できないのですが、この場合は支払する会社の資金の目途が立てば再び取立決済が出来ます。
ですから2度不渡りを出しても銀行取引にはなりません。
この処置により被害を受けた会社は助かります。
震災の被害を受けた会社にとっては朗報です。
しかし問題なのは、その手形が引き落としになる事を見越して資金繰りしていた取引先の会社です。
その会社には特別に救済があるわけではなく、自助努力しかありません。
もしかするとその会社が不渡りを起こし、倒産するかもしれません。
勿論、「東日本大震災の災害による資金不足」理由の不渡手形になっても債務・債権関係は変わりません。
ですから債権者から債務者へ直接請求は出来ます。
手形取引のルールが変更されるということは大変なことです。
昔から手形という制度があり、そのルールは厳然と守られてきました。
その厳然と守られるという事実に基づいて信用が生まれ、商売が成り立って来ました。
しかし今回の様な処置がなされると、ルールに従い仕事をしてきた会社が、自己責任が及ばないところで倒産するなど納得出来ないでしょう。
そのような「東日本大震災の災害による資金不足」による不渡りとして手形が返された会社に対して、ルール変更を決めた銀行協会が各銀行に対して、特別融資をするなどの処置はあるのでしょうか。
大きな仕組みの中で成り立っていた世界が、何かの都合でルール変更が起きると、それが些細と思われたことでも大きな影響を及ぼすことになるということを今回の不渡り猶予問題で考えさせられました。