今日は経営についての話になります。
今まで、京セラフィロソフィに書かれていることは、「考え方」、「生き方」についての記述が多かったのですが、この項からは経営について述べられています。
今日は「値決めは経営である」についてです。
この事はとても大切なことで、稲盛さんは要文と説明を36ページにわたって説明しています。
「経営の死命を制するのは値決めです。値決めにあたっては、利幅を少なくして大量に売るのか、それとも少量であっても利幅を多く取るのか、その価格設定は無段階でいくらでもあると言えます。
どれほどの利幅を取った時に、どれだけの量が売れるのか、またどれだけの利益が出るのかということを予測するのは非常に難しいことですが、自分の製品の価値を正確に認識したうえで、量と利幅との積が極大値になる一点を求めることです。
その点はまた、お客さまにとっても京セラにとっても、共にハッピーである値でなければなりません。
この一点を求めて値決めは熟慮を重ねて行われなければならないのです。」
価格はお客様との交渉で決まります。
お客様は少しでも安くと思い、自分達は少しでも高く売りたいと思います。
合い見積もりを出しながらお客様は値引き交渉をします。
それをそのまま受けては利益が出ません。
だからと言って自社の価格を押し通せば他社から買ってしまいます。
その為、値決めはお客様が喜んで買ってくれる最高の値段を決めることなのです。
そして、それは経営トップの仕事なのです。
営業が何の知恵も働かせず、お客様にただ言われるまま、他社より安い値段を提示して注文を取ってくることでは、経営は成り立ちません。
また、お客様が喜んで買っていくれる最高の値段で決めても、その値段で経営はうまく行くかというと、そうとは限りません。
問題は、売値が決まったら、その中でどうやって利益を生み出していくのかということです。
既に決まった売値で利益を出せるかどうかは、今度は製造の責任になります。
稲盛さんはこの事をご自分の著書「稲盛和夫の実学」でも述べていますが、「売価還元方式で原価を決める」という「売値ありき」という考えをしなければなりません。
京セラでは「原価+利益=売値」という原価主義はとっていないそうです。
稲盛さんは京セラという会社は下請け会社だと言います。
これほど大きな会社でも、大手の電機会社の部品を注文生産して作ります。
その時、先方から言われる価格で決められることが多いのです。
「原価主義」の考えでは利益が出ません。
「売価還元方式で原価を決める」ためには経費の見直し、材料の値下げ交渉、それでも限界があればVA(価値分析)を行い、設計そのものから見直し、利益が出るような設計に変えていくこともします。
ただ単に材料をたたいて買ってコストダウンを図ればいいという甘い考え方では限界が来ます。
そのように値決めは営業から製造、設計までつながるからこそ、「値決めは社長の仕事なのだ」と稲盛さんは言うのです。
この「値決めは経営」という言葉は、改めて経営の深さを知らされた言葉でした。