1993年に石川の開塾式での講演です。
18年前で稲盛さんも60歳頃なので若々しく、話の内容も当時の京セラの経営内容を具体的に話していました。
その中で特に私が興味を持ったことを紹介します。
稲盛さんは「商品の売値は『買った人』が喜び、『売った人』も喜ぶ値段が最適の売値です。」と言います。
京セラは下請会社として仕事をして来ました。
京セラは創業時から松下電器の下請としてセラミック製品を納入していましたが、絶えず値引きを求められていました。
値引きをしても次回はもっと値引きするように要請されます。
仕舞いにこれ以上出来ないというと、損益計算書の提示を求められ、そこに利益が出ていれば、その分安くするように求められたそうです。
私だったら「そこまでさせられることはない」と言って穴を捲くってしまいます。
稲盛さんはそのような値下げ要請がある中で、松下電器が本当に求める最低の金額を聞き、たとえとても出来そうもない価格でも受けることにしました。
そしてその最低の価格を売値として、その中から京セラとしての利益を出す努力をしました。
結局「売値は使う人の価値で決まる」ということです。
しかしその売値で利益が出てくれば、先に書いた「買った人」が喜び、「売った人」も喜ぶ最適の売値になるのです。
一般的に言えば下請会社は立場的に弱者です。
その為、つい下請から離れ完成品を売る業態へ変更したいという気持ちになりがちです。
稲盛さん盛和塾の塾生経営者からそのような相談をされることが多いそうです。
その時稲盛さんは下請会社は下請会社で利益を出すように努力しなさいと言います。
慣れない完成品を売る会社にしようとするから倒産していまう会社が多いのです。
先ほどの様に松下電器の下請会社となれば値引き攻勢がありますが、一方松下電器にしてもそこまで突っ込んで京セラと仕事をしていれば、簡単に他社に乗り換えることは出来なくなります。
お互いに相手の存在を認めざるを得ないのです。
下請けだから利益が出ないということも無いのです。
先ほどの様な松下電器とのやり取りの中で値引きを依頼されても、京セラは経常利益を10%以上確保してきていたのです。
下請会社という会社は多いと思います。
稲盛さんは京セラは下請会社だとハッキリ言います。
でも京セラの経営は下請会社でも工夫と努力で利益が出せる会社にすることが出来るということを教えてくれます。
やはり利益が出ないのはこの工夫と努力が不足しているからなのでしょう。