今回は18回目で最終回になります。
これで78項目の勉強が全て終わりました。
今回学んだのは次の項目です。
74項「手の切れるような製品を作る」
75項「製品の語りかける声に耳を傾ける」
76項「1対1の対応の原則を貫く」
77項「ダブルチェックの原則を貫く」
78項「ものごとをシンプルにとらえる」
今日は74項の「手の切れるような製品を作る」について説明します。
稲盛さんはこれについて次のように書いています。
「私達が作る製品は、『手の切れるような製品』でなくてはなりません。
それは、たとえばまっさらなお札のように、見るからに鋭い切れ味や手触りを感じさせる素晴らしい製品のことです。
製品には作った人の心が表れます。ラフな人が作ったものはラフなものに、繊細な人が作ったものは繊細なものになります。
たくさんの製品を作って、その中から良品を選ぶというような発想では、決してお客さまに喜んでいただけるような製品はできません。
完璧な作業工程のもとに、1つの不良も出さないように全員が集中して作業にあたり、1つ1つが完璧である製品作りを目指さなければなりません。」
続けて、「手の切れるような製品」について稲盛さんは経験の中から次の様なことを書いています。
「半導体のパッケージを作ろうとしてある技術者にリーダーとなってもらい、研究開発を始めました。
半導体パッケージの開発は今まで誰も経験したことのないほど過酷な作業でした。
苦労の末やっとそれらしきものが出来あがると開発リーダーが私のところにサンプルを持って来ました。
苦心惨憺して作ったことは分かっていたのですが、それを見た時どことなく薄汚れているように映りました。
薄汚れていはいたのですが、製品自体は半導体パッケージとしての特性はすべて満たしていました。
それでもそれを見た時、『なるほど性能は間違いないが、これでは駄目だ』と言いました。
リーダは『なぜですか特性は全部満たしています』と言い返します。
それでも私は『見てみろ。薄汚れているじゃないか』と答えました。
大変苦労して出来上がったのですから、彼は気色ばんで食ってかかりました。
『あなたも技術者なのだから、理論でものを言うはずでしょう。それを薄汚いとはどういうことですか!
薄汚いことと製品の特性とは関係ないはずではありませんか。感覚で判断するなんて、おかしいじゃありませんか。』
『測定の結果特性は立派に満足していると君は言うけれど、これだけ変色しているということは、スペックも何とか合格ラインにのったというようなサンプルであって、最高の出来栄えとは言えないはずだ。
本来、立派な特性を備えているものは、見た目も美しいものであるはずだ』と私は彼に説明しました。」
「最高の出来栄えであるものは見た目も美しい」ということが、稲盛さんが言う「手の切れるような製品」なのです。
この稲盛さんの話と先日亡くなったアップル社のスティーブ・ジョブズ氏の行動とが重なります。
スティーブ・ジョブズ氏は、Macintoshにはシンプルな美しさが必要だと考え、基板パターンが美しくないという理由で、設計案を幾度となく却下した。
また、同じく美しくないという理由で、拡張スロットの採用を拒否したり、みすぼらしいフロッピードライブのイジェクトボタンをなくさせ、オートイジェクトを導入させることも行わせた。(ウぃキぺディアより)
ジョブズ氏はMac製品の美しいデザインに執着を持って取り組んでいたのです。
より良い製品とは美しくて手の切れるほどのものなのです。
稲盛さんは野球選手にもたとえて、優れた投手は投げるフォームも美しいと言います。
そう言えばイチローのプレーする姿が美しいのも、それに通じるモノがあると思います。