75項目「製品の語りかける声に耳を傾ける」です。
これについて稲盛さんは次のように書いています。
「問題が発生した時や、仕事に行き詰まった時には、その対象となるものや事象を真剣に、謙虚に観察し続けることです。
たとえば、製造現場では、あらゆる手を尽くしても歩留まりが思ったように向上せず、壁にぶち当たることがよくあります。
そんなときは、製品や機械、原材料、冶工具に至るまで、工程全体をすみずみまで観察し、素直な目で現象をじっと見つめ直すことです。
不良品や整備の悪い機械があれば、その泣き声が聞こえてくるはずです。
製品そのものが解決のヒントを語りかけてくれるのです。
先入観や偏見を持つことなく、あるがままの姿を謙虚に観察することです。」
稲盛さんはこの項目について19ページにわたりご自分の思いを説明しています。
その中には製品開発・完成までの苦しい思いなどがあるのか、過去の製品製造について詳しくその工程が書かれています。
「製品の語る声に耳を傾けて製造すると、手の切れるような製品を作ることが出来る」と書いています。
やはり仕事に真剣に打ち込むと、自分の作る製品に限りない愛情が生まれないのです。
そして「自分の製品を抱いて寝たい」と思うに位にならないと、いい製品は出来ないのです。
また「調和の感覚のない人間に不良品や異常は発見できない」とも書いています。
整理・整頓・清掃は口やかましく言うそうです。
机の上に書類が斜めになって置いてあると、「机はスクエアなのだから、辺に平行におかなければバランスが取れず、気分が悪いでしょう。四角いところには四角であるように、辺をそろえておきなさい。」
即ち稲盛さんは四角の机の上にものがバラバラ置かれているのを見て、それに違和感を覚えないようでは、いい製品というものを理解することも出来なければ、それをつくることも出来ないと言うのです。
私も新入行員時に言われたことを思い出しました。
壁にかかっている絵が傾いていることに誰も気付かず、直さなかったことを支店長は叱りました。
絵が傾いていても、それに何も違和感を感じないことを指摘したのです。
そのようなことにさえ気付かないと、お客様への心配りもおろそかになり、そしてお金のミスも招くと言っていました。
「製品の語りかける声に耳を傾ける」ためには、繊細と言われるほどの心配りと愛情が欠かせないことなのでしょう。