この項と次回書きます「ダブルチェックの原則を貫く」は経理に関して書かれたものです。
稲盛さんは「1対1の原則を貫く」について次のように書いています。
「ものごとを処理するに当たっては、どんぶり勘定でとらえるのではなく、ひとつひとつ明確に対応させて処理することが大切です。
たとえば伝票なしで現金や物を動かしたり、現金や物の動きを確認せずに伝票のみで処理するというような事があってはなりません。
売掛金の入金チェックにしても、どの売上分をどの入金分で受け取ったかを個々に対応させながら1対1で消し込むことが必要です。
また、生産活動や営業活動においても、[総生産]や[総収益]と言った、いわゆる収益とそれを生み出すために要した経費を正確に対応させ、厳密な採算の管理を行うことが必要です。」
この事は稲盛さんが書かれた「稲盛和夫の実学」の中で詳しく説明されています。
この本は稲盛さんが書いた他の本とはちょっと違っています。
多くの本は人として、社長としての考え方や生き方を説いていますが、この本は実務に書かれています。
まだお読みでない方は是非お読みください。
話を戻します。
どのような会社でも作った製品が納入される時、必ず納品伝票が付いています。
それに先方から受領印をもらって初めて売上として計上されます。
必ず物と伝票が共に動きます。
現金の入出金もそうです。
現金が入出金する度に、出金伝票や入金伝票が起票されそれには相手の名前や適用が記入されています。
一時的に現金を出さなければならない時も、仮伝票を起票します。
たとえ社長だからといっても勝手に持ち出してはダメです。
この1対1の原則を守ることは企業の透明性を高め、不正を防ぐことになると稲盛さんは強調します。
それに関する1つの話を上げています。
ある大きな会社で決算月の3月に予定していた売上や利益が達成できない。
そこで取引先に「うちの売上が立たず困っている。3億円をそちらから売上を立てもらえないか」と頼むそうです。
品物はないのに取引先に仕入伝票を発行してもらい、自分のところは納品伝票を立て、出荷したようにします。
4月の半ばくらいになると、返品伝票を切ってなかったことにします。
架空の売上が上がり、また品物が無いので経費も発生せず、売上は100%利益になってしまいます。
それは粉飾決算です。そのようなことは絶対あってはならないのです。
不正の温床を作らない為にもこの「1対1の対応原則を貫く」は重要なことです。
そして経営者トップがそれを実践して示していかなければならないことは当然のことでしょう。