色々な人とお会いして、特に若い人にお会いして感じるのは、余裕の無さです。
余裕は楽をするとか、手を抜くとは違います。
力を少し貯めていざという時に使うことを意味します。
勿論なりふり構わず突進することも大切ですが、その時もどこかに気持ちの余裕が必要かと思います。
トップになることを第一に考えて突き進むのもいいのですが、後ろにいて、力を蓄える時期も必要です。
昨日読んだ城山三郎さんの「無所属の時間で生きる」という本を読んでいた時、「どん尻が一番」というのがありました。
昔の上海での話。中国人とスコットランド人との混血児の騎手が、混血児であるため、これはという馬に乗せてもらえず、毎度のレースで「どん尻」でした。
ところが彼はくさりもせず、むしろ逆転の発想で生きていました。
「『どん尻』であることが素晴らしいことでした。私にはレースの全貌が見えたのです」と言います。
つまり一番後から眺めることを重ねたおかげで、レース展開が読め、ライバル全員の行動が分かるようになったというのです。
そうしているうちに、彼を買う人が出てきて、いい馬に乗せてもらうと、12レース中10レース優勝してしまい、英雄になり、戦後は香港に移り、第二の人生もまた成功しています。
人生、不遇続きの中でもくじけることなく、何かに気ころがけていさえすれば、いつか報われる日が来るという訳です。
普通、人は弱い者で、「どん尻」になると自分を卑下し、やけっぱちになりがちです。
もう人生が決まってしまったような錯覚に陥ります。
「どん尻は素晴らしいものでした」と言える余裕は、「大器晩成」型の人が持つ心構えでしょうか。
最近「大器晩成」という言葉は語られなくなりました。
若い内は、すぐにトップになるより、力を蓄え後ろからじっくり着実に進む生き方もいいのではないでしょうか